「彼の精神を安らげ優しく包んでくれるはずのマティエール、明るさを失わない程度の暗さ、なじみ深いものを輝かせ、その色あいを魅惑的なものにするのに充分な光、視界をいつまでもひきつけてくれる微視的な明晰さ、海岸の貝殻や、葉の上のてんとう虫や、机の上の果物が、いつもの永遠の日常を保証してくれるような近しさで眼の前にあること、そうしたあらゆる欲望のもとに、この空間、あの静物、あのマティエールが選ばれているのである。」
ギャラリーそうめい堂は、浜口陽三の作品展を開催いたします。
浜口陽三は、黒の技法と呼ばれるメゾチント技法において、赤、黄、青、黒の4色の版を重ねて表現するカラーメゾチント技法を開発しました。メゾチント技法とは、銅版全体をベルソーという器具によって細かく傷つけて目立てを作り、その目立てを慣らすようにして描写する技法で、目立てた部分が絵の中の黒、慣らした部分が白になります。僅かな加減によって幅広いトーンの表現が出来るのが特徴です。
美術評論家の中山公男は、浜口のカラーメゾチントにおけるマティエールについて、以下のように表現しています。
「彼の精神を安らげ優しく包んでくれるはずのマティエール、明るさを失わない程度の暗さ、なじみ深いものを輝かせ、その色あいを魅惑的なものにするのに充分な光、視界をいつまでもひきつけてくれる微視的な明晰さ、海岸の貝殻や、葉の上のてんとう虫や、机の上の果物が、いつもの永遠の日常を保証してくれるような近しさで眼の前にあること、そうしたあらゆる欲望のもとに、この空間、あの静物、あのマティエールが選ばれているのである。」
(「浜口陽三全版画作品集」「浜口陽三 聖なる小宇宙」より引用)
暗いキューブの閉鎖的な空間の中に浮かび上がるモチーフは、その空間の謎を私達に提示し、途方もない時間について語りかけます。
本展では、画集の表紙にもなっている「西瓜」(1981年)をはじめ、見応えのある作品を揃えました。
是非ご高覧ください。
Date
2022
9. 17 Sat - 10. 1 Sat
Artist
浜口 陽三
HAMAGUCHI Yozo
Web Exhibition
こちらの展覧会は終了しました。
展示作品は引き続き店頭にて販売しておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。